トムラウシ ~ほっカいどうは デッかイどう!~
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標高:2141m
登頂日:2006.7.20
前日にヒサゴ沼避難小屋に泊まり、そこから登った。
計画ではさらに十勝岳まで縦走する計画であったが、ヒサゴ沼までの2日間がずっと雨だったので、気力が萎えてしまった。
トムラウシに登ったあと、天人峡へ下山することに変更した。
という訳で、ヒサゴ沼避難小屋にほとんどの装備を残し、ほぼ空身でトムラウシに向かった。
そのため足取りは軽快だった。
そして北沼に着く頃には、雨は止み雲の切れ間も出てきた。
おかげで頂上では憩いのひとときが味わえた。
ヒサゴ沼に戻り、荷物を回収し天人峡への下山ルートを進んだ。
荷物が増えたが、あとは下るだけなので、気持ちは軽かった。
お花畑もあって、楽しんで歩けた。
「だんだん運気があがってきたかな!?」
と、萎えた気力もよみがえってきた。
終わりよければすべてよし。
喉元過ぎれば熱さも忘れる。
雨にたたられた3日間だったが、下山したら良い思い出に変わるだろう。
下山前だが、すでにこの辺りでそんな予感がした。
軽やかな足取りで下山を続けた。
灌木帯を過ぎ、樹林帯へ入った。するとムシが増えてきた。
しかし、寝太郎はムシが苦手ではない。
どれだけブンブンたかられても、目や口に入ってくるといった実害がなければ大丈夫である。
「ムシたちよ。悪い虫がつくのは娘さんと相場が決まっているのだよ。オジサンにたかってもしょうがないぞ。」
と、オヤジギャグをつぶやき、しばらく適当にあしらっていた。
だが、なんだかムシの様子がいつもと違う。
すぐに手足にかゆみが出始めた。
不思議に思い腕を見たら、大~きな蚊が寝太郎の血を吸っていた。
露出した腕はもちろん、ズボンやシャツの上から吸血している奴もいる。
「なんじゃこりゃあ!」
全身の血の気が引く感覚に襲われた。
いやそれは感覚だけじゃない。
実際にジーパン刑事同様に大出血してるのだ。
「なんじゃこりゃああああ!」
改めてジーパン刑事の叫びをあげた。
「大雪にほえろ」である。
このデッカい蚊の大群の襲撃は下山口まで続いた。
正確に言うと、下山口まで蚊の大群がいたのかどうかは分からない。
少しでも動きを緩めたらヤブ蚊軍団に襲われるという恐怖で、下山口まで駆け降りたというのが真相だ。
泳ぎ続けねば死んでしまうクロマグロと同じ立場であった。
蚊への攻撃と防御にもっとも有効だったのは、手は全力で高速に振り回し、その上で、全身の関節をくまなく動かし続けるというアクションだった。
一言でいうと「踊り狂う」のだ。
2泊3日の最終日にあれほどの走力を発揮したことはない。
そして、あんなに武闘力と舞踏力を発揮したこともない。
今後、あんな下山はもう一生したくない。
切に切にそう願っている。