大雪山 ~ 料理の極意は素材を全て活かしきること ~
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標高:2290m
登頂日: 2006.7.18
大雪山は旭岳を主峰とする山群の総称である。
広大で日帰りでは回りきれない規模だ。
またケチな百名山ハンター寝太郎としては、トムラウシ・十勝岳も一度に合わせて登りたいと考えた。
なので寝太郎は大雪山とトムラウシ・十勝岳に山中泊で登る計画を立てた。
まず旭岳に登り、白雲岳避難小屋泊、ヒサゴ沼避難小屋泊、トムラウシに登り双子池キャンプ指定地泊、十勝岳から下山という3泊4日の計画であった。
これが初の北海道遠征だった寝太郎は、様々な不安を抱えていた。
・・未知の山域でいきなりの長期山行・・
・・夏でも凍死しうる冷涼な気候・・
・・不治のエキノコックス感染・・
が、一番の不安は何といってもヒグマであった。
死亡事故も発生しているほどの危険度だ。
特に福岡大ワンゲル部の遭難などは事故というより、もはや事件である。
絶対にヒグマに遭遇したくない。
万が一3泊目のキャンプ地で遭遇したら最悪である。
テン場でヒグマの襲撃を受けたら、それはすなわち死であろう。
もし、遭遇したらどうしよう。
「ヒグマよ!事件はテン場で起きるんじゃない!現場で起きているんだ!」
と、青島俊作のように叫べば、ヒグマが現場へ急行してくれはしないか?
いやいや、そんなドラマのような展開はあるまい。
アホ島 瞬殺になって殉死であろう。
そんなバカげた想像を抱きつつつつ、大雪山に向かったのだった。
そして1日目の夜。
ヒグマではないが事件が起こった。
寝太郎はあいにくの雨に降られ、白雲岳避難小屋に濡れネズミで到着した。
夏なのに唇が青くなる寒さだった。
すぐに着替えた寝太郎は晩ご飯を支度した。
手早く湯を沸かしアルファ米に注ぐのだ。
青島デカならぬ青ざめバカの寝太郎もこの時ばかりは、手早く開封し、サッと湯を注いだ。
なんだか手際が良すぎる気がしたが、温かいご飯に早くありつきたい気持ちがスピーディーなパフォーマンスをリアライズしたのであろう。
選んだアルファ米はカレーピラフ。
「それもあって華麗な手さばきで支度できたのかな」
などとお寒いダジャレをカマし、待つこと15分。
カレーピラフが出来上がった。
そして開封時。
事件は起こった…
カレー異物混入事件の発生である。
乾燥剤を取り出し忘れていたのだった。
変死体のように乾燥剤がピラフの上に横たわっていた。
乾燥剤ごと湯モドシしてしまったアルファ米…。
それを食べる勇気は寝太郎になかった。
仕方なく即席めんを作り、それを食べてその日を終えた。
翌日、寝太郎はヒサゴ沼に向かった。
残飯を山中に捨てることは、ヒグマの人間の食物への誘引を招き、ヒグマの脅威を増すので禁止である。
なので、カレーピラフは携行した。
しかしである。
「カレ(インボ)ーの香り(ッジ)を封鎖できませ~ん!」
気のせいかもしれないが、ザックの奥底からカレー臭がするのだ。
「カレーの香りって、人間同様にヒグマの食欲もそそるのかな??」
カレーピラフを携行することは、確かに将来的なヒグマの脅威の軽減となる。
が、目の前の脅威は湯モドシした乾燥米のように、大きく膨らんだ気がするぞ。
そんな疑問が脳内に渦巻き、景色を楽しむ余裕もない。
通常歩行動作に横方向の臀部振幅動作を加えることにより、我が熊鈴の音響到達距離の最大化に努めた。
簡単に言うと、しこたまケツをフリフリ歩き、熊鈴を高鳴らせチャラチャラ歩いたのである。
カレー臭と加齢臭とケツを振りまきながら練り歩くオジサンに、さすがのヒグマも恐れをなしたに違いない。
結局、カレーピラフも加齢オジサンも無事に下山できました。