利尻岳 ~もしもこの世に10秒後の世界を写すカメラがあったなら~
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標高:1721m
登頂日:2010.8.4
はるか彼方の最果ての地の先に広がる海。そこに浮かび聳える山なのだ。
せっかく登るのなら旅情を満喫したいものだ。
寝太郎にはそんな思いがあり、新潟まで車→小樽へフェリー→道内周遊→稚内からフェリーの経路で利尻島を訪ねた。
その結果、はるばる来たぜ利尻島と唸ってしまうほどの旅情を味わうことができた。
利尻島へフェリーで行った訳だが、一つ難点があった。
寝太郎のように足が遅く、登山口まで早く移動したい者は、港でタクシーの順番を争わねばならないのだ。
まぁ、寝太郎には函館に加え「利尻の女」がいるので、「さかまく波を乗り越えて遥々来たぜっ!」と彼女に伝えておけば、港で待っててくれるので問題はない。
……
というのはウソである。
利尻島はおろか北海道に一人の知り合いもいない寝太郎は、タクシーの順番を争うため、急いで下船した。
幸いタクシーにすぐ乗れて、登山口にも一番乗りした。
先陣を切って意気揚々と歩き始めた。
そして、しばらく歩くと普段よりペースが速いことに気がついた。
「せっかくタクシーに一番乗りしたのだから、後の人に追い越されては意味がない!」というヘンな意識が寝太郎に生まれたのだ。
という訳で、速いペースで進んだ。
さらに最初は傾斜が緩いこともあり、良いペースで進めた。
が…
突如、寝太郎の頭に衝撃が走った。
室伏選手がブン回すハンマーが脳天直撃したほどの衝撃であった。
登山道に張り出したダケカンバの幹に頭を強打したのだ。
ペースが速かったので、めちゃくちゃ痛い。
とても我慢が出来なかったよと唸るほど痛かった。
そんな事故もあったが、なんとか長官山に到着。
なお、オデコへの一撃を室伏選手のハンマー投擲になぞらえたが、室伏長官はこの山名とは何も関係がない。
そして丘の上に咲くヒナゲシの花を観賞しつつ歩き、山頂に至った。
山頂の眺望は稀有なものだった。四方の「すべてが海」である。
「ひょっとしてあれは樺太?」と思うと、岳樺の太い幹が脳天直撃した苦い思いが甦えったりもしたが、やはり遥々遠くへ来たことを実感してしまう素晴らしい眺望であった。
そんな旅情に浸る寝太郎だったが、頂上の片隅にいる外国の方が気になった。
白人3人がカメラをいじくり、「AHデモナイ COデモナイ」と苦闘していたのだ。
北島寝太郎を自称するほど歌はうまいが、外国語オンチの寝太郎。
その様子を見て見ぬふりした。
しかし、遂に「@×△:#&Π<□※?」と声を掛けられてしまった。
寝太郎はそれをムロフシできるほどの孤高の鉄人ではない。
「アイシー、アイシー」と、イエローモンキーあいそスマイルを浮かべつつ、カメラを受け取った。
そして、シャッターを押した。
が、何の反応もない。
液晶画面にも変化はない。
他のボタンを押すとなぜだかたまにシャッター音がするが、肝心のシャッターボタンは押せども押せども無反応である。
いろんなボタンを押したせいで、画面にヘルプ的な文字が表示されるが、それも意味不明である。
もはやお手上げであった。
「おー そーりーそーりー。あい きゃんと かめら。」とカメラと同様ブロークンなイングリッシュと共にカメラを返した。
そして下山した。
翌日、フェリーで利尻島を去った。
ずっとデッキに佇み、「いつかまた来ることができるかなぁ」と利尻島を、見つめていた。
そこへ昨日の外国人が現れた。「OH! $◎%■Л>*!!!」と意味不明な言葉を発しつつも、笑顔である。
というかゲラゲラ笑っていた。
そして寝太郎の隣へやってきて、カメラを見せてくれた。
そこに映っていたのは、斜め水平線・股間・地べた・円陣の仰観などなどの、ヘンテコな写真であった。
最もヘンな写真が、寝太郎の鼻の穴のドアップであった。
「〒%-\@^♡♪^/:×. $&□ω=>♯!!」
彼らの説明によると、カメラ設定がセルフタイマーになっており、山頂でシャッター押下の数秒後の世界を激写しまくってたらしい。
で、おかしな写真のオンパレードになってしまったのだ。
はぁ~、なんてこった…
しかしあの、サブちゃん顔負けのドデカ鼻の穴の写真。
あれ、今どこの国にいるのかなぁ。